ボーダレス・アートミュージアム NO-MA

ボーダレス・アートミュージアム NO-MAへ行ってきました!

 

ここは滋賀県近江八幡にある、昔ながらの古民家を活かした小さな美術館です。

 

ここの建物に限らず、周囲一帯に古民家や昔ながらの建物が並ぶ美しい街ですごくいいところでした。

 

イメージ的には京都が近いかもしれませんが、京都と大きく違うのは静けさがあるところですね。冷たい空気と澄んだ静けさがマッチして、まるで日本画の世界の中に居るみたいでとてもよかったです。

 

さてボーダレス・アートミュージアムですが、今回は障害をお持ちの方々が制作されたアート作品が多数展示されていました。


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滋賀県は障害者と共に生きていくことに力を入れているイメージがあります。

 

共に生きるも何もみんなこの世に生を受けた対等な存在なので共に生きているのは当たり前っちゃ当たり前のことではあるのですが、「障害のあるなしに関わらずみんながそれぞれの良さを活かしあって生きていきたいですよね」という感覚があたたかく漂っている土地のように思います。

 

滋賀には偏屈さがないんですよね。過剰な見栄もありません。元々多くの人が行き交ってきた土地だからか、「都市と自然」とか「都会と田舎」とか「障害者と健常者」みたいな対比的な見方をすることがあまりなく「ここに存在するもの同士尊重し合って一緒に過ごしてみようよ〜上手くいってたらそれでええやんか〜」というようゆるさを感じる土地です。

 

「これが正しいんだからこう矯正しなければならない」という意地がないんですね。代わりにそこにあるものやそこにいる人をありのまま受け入れ大切にし続けることに意識が向いているように思うんです。

 

そんな滋賀県なので、ボーダレス・アートミュージアムにもわざとらしさがないというか「誰かのこだわりや素敵なものを展示していますのでぜひ見てってください〜」という、人がスっと足を運んでみやすい開けたマインドを感じました。

 

(わざとらしい美術館ってあるの?という話かもしれませんが、アーティスト側の障害の有無とは関係なくどんなテーマでもなんかわざとらしい感じがする美術展はあります笑)

 

作品も本当に良かったです!

 

私は結構生臭い人間なので、何かつくろうと思っても「こうしたら他人からこう見えるかな」とか「タイパが〜」とか「コスパが〜」とか考えてしまって、本当に自分のこだわりだけに向き合って何かを生み出すということがなかなかできないんですよ。

 

特に持病が発症してからは、生活しているほとんどの時間において体調の悪さに悩まされ、仕事がうまく続けられないもどかしさから、自分の営みと仕事を結びつける思考をし続けすぎてしまっていた気がします。

 

最近ようやく調子がよくなってきたように感じますが、今までは1日24時間ある中で体調に問題がない時間がはちゃめちゃにほんのちょっとしかなかったので、そのほんのちょっとをお金を稼ぐことに使わないとと思って、自分の好きなことや趣味までお金を稼ぐことに活かそうとしすぎてしまっていたんです。

 

私が一番得意なことは、どーでもいいことを考えいらんものをつくることなんです。これに関しては右に出る者はいないという自負があるくらい得意なんです。でもほんのちょっとしかない「まだ健康的だと言える時間」をそれに使ってしまうと、いっこもお金を稼げないし経済的な自立をするのが難しいので困っていたんですよ。

 

本当は何かを生み出すことが好きなのに、いつの間にかタイパやコスパを考えすぎて、他人にどう見られるか、他人からの需要があるかを考えすぎて、最近はもうすっかり楽しくなくなってしまっていました。

 

ちょうど最近精神的に成長してきたのもあって自分の中の言語化しきれない領域が特になくなってきて、大体なんでも自分で理解できているかま、だ理解できない領域についても「他者に理解してほしい」という欲求がなくなってきたので、世界に叫びたいことばも伝えたい想いもなくなっていました。

 

「そんな寂しいことある!?」という感じですよね…。

 

私は本当は表現することが好きなんですよ。表現することが好きじゃない人は、自分が何も生み出せなくなっても困らないし悩まないからです。そういう人は他に好きなものや自分を満たしてくれるものがあるので、生み出せるとか生み出せないとかいう話で悩む必要がないんです。

 

だから、こんなことで悩んでいるということは間違いなく私は表現することが好きなのに、表現が楽しくないし、何も出てこないようになってきていました。

 

そんなときにこの美術展を見られたのですごくワクワクと楽しめましたね。

ここにある作品はどれも制作者が「つくりたいからつくった」ものたちなんだと思います。お題や材料は人が渡してくれたものや贈ってくれたものだったとしても、それをどう組み立てるかは本人が向き合い突き詰め考えたのではないかと思います。

 

特に好みだなと思ったのは川西光さんの作品です。


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アーティストさんが手縫いで制作されているそうなのですが、リュックやフェルト地のモチーフだけでなく、細かな刺繍やミサンガまで丁寧につくられていてすごく可愛いんですよ。

ブラウンのリュックに関しては、帽子に使うような特別な縫い方が活用されていて驚きました。

 

とにかく丁寧に、自分のこだわりと素材を大切にしてつくられたのがよく伝わります。

 

私はなんか、この作品を見て泣けちゃったんですよ。

 

自分が何かをつくるにあたって、こんなに純粋に時間も素材も好きなだけこだわって尽くしたいだけ尽くして愛せたことって最近あったっけ?って思ったんです。

 

何か新しいことに挑戦しようにも、それにどれだけの時間がかかる?どのくらいお金がかかる?それをすることで自分にどれだけのメリットがある?と考え込みすぎていたんです。

 

この作品には焦りがないんですよ。すごく豊かなんです、ご本人がやりたいことをやりたいだけ再現されているんです。

 

こちらの作品の隣にはアーティストさんが制作過程を記録したノートも展示されているのですが、それもすごく面白かったんですよ。ひとつの部分をつくるにあたって悩みに悩んで、分からなくなってきたから一度置いておくことにしたくだりが書かれていて「分かる〜!笑 時間をあけたら閃くことがあるからね笑」とつい共感してしまいました。

 

この作品が持っているのは何も考えていない自由さなんじゃないんですよね。色んなことを考えた上での自由さなんです。でもその「色んなこと」に含まれているのは、自分自身ととことん向き合うことで生まれる葛藤であって、時間とかお金とか人にどう見られるかとかそういう外部のものに関する葛藤はもう少し優先順位が低めなのではないかと思います。

 

「わあ、いいなあ」と思いました。私も自分にとってのこういう存在のものをつくれたらいいなと思ったんです。

 

そんなこんなで学びの多い美術展ですが、ここは自分が好きなものを描けるコーナーもあります。


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こんな感じで、ゆっくり座ってくつろげるスペースに紙とペンが綺麗に置いてあり、自分が思い描く好みの地図と信楽たぬきさんが描けるようになっていました。

 

ので、私も描きました。


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これは楽しかったですね!

やっぱり自分ってどうでもいいことを考えるのは得意なんだよなあと思いました。こういう空想的で楽しくて一銭にならないものなら正直いくらでも描けると思います。

 

受付に持っていったらすごくにこやかに受け取ってもらえましたので、皆様ぜひ楽しく描いて楽しく提出してください。

 

さてとっても良かったボーダレス・アートミュージアムですが、ここは立地がすごく良くて近くにお堀と山と城跡があり、ロープウェイで山に上って滋賀の景色を楽しむことができます。


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景色バリ綺麗じゃ〜ん!!!と思いました。

 

ここも本当に良かったですね。やっぱり静かなんですよね。観光客の方は他にもぽちぽちいらっしゃるんですけど、山の静けさと神秘性を理解するには十分な環境で強く印象に残りました。

 

行きも帰りも駅から徒歩でウロウロしたんですけど、近江八幡はとても綺麗でユニークな街だと思います。人に大切にされている街という雰囲気がありますね。またぜひ訪れたいなと思いました。